デザインコンパスブログ「ポッカポカ日和」

難しい設置条件のカップボード

2018-11-12

先日納品させて頂きましたM様のカップボードをご紹介させて頂きます。
ご新築のマンションに合わせて設置できるカップボードを・・・ということで、お問合せを頂いたのは7月でした。
一度は断念されましたが、やはり既製品で合うものが無さそうなのでと具体的にプランをさせて頂くことになりました。
平面図を見せて頂くと、確かに難しい設置条件でした。

勝手口の枠まで39cmの浅い奥行き。これではレンジが乗りません。
それから中央に大きく下がった梁。梁の下まで2m程の天井高さです。
勝手口側だけ奥行きを浅くして手前を深くしようにも、キッチンとの距離が限られています。
最初は勝手口の枠厚2cmを利用して、全て同じ奥行き41cmでプランをさせて頂きました。


何度かのご提案の後に、内覧会にお伺いしました。
図面上では把握していたものの、改めて難しい設置条件に悩みます。
梁の手前と奥で天井高も違いました。
現地で感じたことを基に2案ご提案させて頂いて、最終的に下図のような形で製作をさせて頂くことになりました。


カウンターから下は同じ奥行きでラインを通し、勝手口側のレンジから天井まで、梁下の吊戸棚、その下のオープン棚の4つで奥行きが異なるカップボードです。
全面フラットに凹凸無くが好まれるこの頃ですが、本当に色々悩んだ末の利便性とデザインを兼ねた設計です。

いよいよ施工当日。まずは台輪の設置から。
さあ、どう納まっていくでしょうか。内心ドキドキしています。

奥に見えるのは、先に設置した下台です。
上台の到着を今か今かと待ち望んでいます。

カウンターから上部は、手前で全て連結した状態でそのままごっそり乗せようという考えです。
下地のない壁に取付けるには、先にバックパネルと一体化させる方法しかありませんでした。
サイドの縦格子もこうすることで、上下に余計な受け木がいらず、格子だけが自立した状態に見せることができます。
キッチンをまたいで、低い梁のある天井へ。行っては戻りのかなり無謀な挑戦でしたが、数回目でようやく入りました!


勝手口側の納まり。枠の手前ギリギリで扉の前面がピッタリ納まりました。


カウンターは枠よりせり出していますが、ドアはちゃんと開閉できます。
こうすることで、ようやくレンジの脚も乗って居場所が確保できました。


完成です。
格子の無垢がポイントのナチュラルで気持ちの良いカップボードになりました。
奥行きの違いもほとんど気になりません。
カウンターを勝手口まで一本見通せることで、奥行きを感じて広く見えます。


中央の大きなフラップ扉は軽く開いて途中自由な位置で留まります。開けるとどこに何が入っているかを一望できて便利です。
全面が下台と同じ奥行きだと、開ける度に後ろに下がらないといけないので、この扉は使えませんでした。
更にレンジの奥行きよりも少し浅くしたことで圧迫感なく開閉できるようになっています。


背の高いピッチャーや水筒の寸法に合わせた深い引出しの中の内引出し。
表にたくさん取っ手があると見た目がうるさく感じますが、こうするとすっきり見えます。


冷蔵庫との間の格子。
冷蔵庫が奥まっているので棚にぶつからないための格子ですが、棚だけが自立して冷蔵庫が見えているよりもなんだかちょっとほっこりした感じです。
バックパネルは写真では見えませんが、麻模様のメラミンを使っているので汚れに強くて落ち着きもあります。


お引越しに間に合わず本当に申し訳ありませんでしたが、その分じっくりご検討頂けたような気がします。
難しい設置条件でしたが、使命感を感じられてとても遣り甲斐がありました。
これからMさんご家族のライフスタイルに寄り添って成長できる家具でありますように。
可愛がって頂けると嬉しく思います。

Mさん、本当にお世話になりました。末永くよろしくお願い致します!

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